忍者ブログ

悠々自適

癒音の徒然日記と音楽生活

2024/04    03« 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  »05
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ゲーム仲間内でお題小説を書くことにいつの間にかなってました。
それが完成したので此処に載せたいと思います(二次創作サイトにも上がってます)。

-----------------------------------------------------

Deme発案 お題小説 『おっさんと犬』
お題:おっさんと犬
書き出し指定:吾輩は犬である

登場人物
メイン
☆黒曜-コクヨウ-(ペット名:弓月)
本作の主人公①
黒銀の毛並みと琥珀色の瞳を持つ狼
Gremlinという森の主
高月馨にペットとして飼われていた

☆高月馨-タカツキケイ-
本作の主人公②
藍墨茶色の髪と鳶色の瞳を持つ男
襟足が長めのショートカットで、長い前髪は6:4で分けている
愛育総合病院で小児科医を務めている
進行性骨化異形症(不死の病)にかかっている。

森にすむ子供たち
☆ジェダイド:九尾の狐
☆フローライト:ユニコーン
☆オニキス:ケンタウロス


 吾輩は犬である。正確には黒銀の毛並みを持つ狼なのだが、
今から100年近く前に犬として人間に飼われていたことがある。
皆が思っているように人間は怖くて醜いだけではないのだ。
今から暖かい人間と私の物語を話そう。

 「主さま(あるじ)が人間なんかに飼われていたなんて嘘だぁぁ…!!!
主さま(あるじ)はこのGremlin(グレムリン)を守る尊いお方で、
人間は俺たちをいつも狩ろうとしている化け物じゃないか!?」
「ジェダイド、落ち着きなさい。主さま(ぬしさま)は嘘など申しません。
落ち着いてお話を聞きましょう。」
「うん、フローライト。でも、
いつも俺たちを狙ってる人間が優しいなんて信じられなくて…」
「フローライトの言うとおりだぞ、ジェダイド。
われらの中にも、悪い奴といい奴がいるように人間の中にもいい人はいるんだろう。」
「うん、オニキス。わかった、最後までしっかり聞く。」

 あの頃の私はなんの力もない唯の狼で、密猟者に狙われ重傷を負っていた。
私は狼の中でも人間たちの間では絶滅とされている種だったらしく、
密輸して高く売りだそうとしていたらしい。
密猟者から逃げている間に暗い顔をした一人の人間に出会った。
どこを歩いているかもわかってないような朦朧とした表情でさまよっている男で
普段は気にしないで逃げるだろうが、どうしても放っておけなかったのだ。
今思うとあの人の温かい何かに惹かれたんだろう。
暗い表情のあの人に“大丈夫か?”と声掛けながら寄り添うと、
あの人は驚きながらも、私の応急手当てをしてくれた。
医者として、傷付いた私を放っておけなかったらしい。

 「大丈夫かい、君!?」 “触るな!!”
私のことを心配してし、怪我に手を伸ばした彼をつい威嚇してしまった。
「大丈夫、落ち着いて。君のことを直してあげるから。」

 彼の手当てと手厚い看護のおかげで私の怪我はだいぶ回復した。
しかし、彼があのときしていた表情が気になって彼から離れられないでいた。
「もう、森(おうち)へお帰り」
という彼に逆らって、彼を抱きしめ唇にキスをした。
“一緒にいて”と“私が守るから”という思いを込めながら。
そうして私は彼の家でペット【弓月】として飼われることになったのである。

 彼との合同生活は思った以上に快適だった。彼の温かい手に撫でられると
不思議な力があるのかと思うくらい気持ちよく、すぐに眠ってしまう。まるで赤子のように。
優しく、前向きな彼がなぜ彷徨っていたのだろうと考えながらも、
彼からは何も出ずあの瞬間まで分かることはなかった。
もっと早く言ってくれれば…私も何か出来たかも知れないのにといまだに後悔をしている。

 彼の日課は早朝と夕方のランニングだ。
散歩と称して一緒に走っていて分かったのは彼が必要以上に運動をすることだ。
太っていたら分かるが、彼は平均より痩せていて且つ、
当直後のどんなに疲れている時でも走ることを欠かさない。
“なぜ、そんなに無理して走るのだ?”と問いかけても
「健康にいいから。継続しないとね」
と彼は笑っていたが、顔に影ができていたので何か理由があるらしい。
私のことをまだ信用してくれないと分かってとても悲しくなった。
朝昼晩きちんと食事をとっている彼がダイエットをしているとは考えにくいが、
そこまで彼を駆り立てるものがどこにあるのだろうか。

彼と生活を始めて約1年。
彼の生活が崩れてきた。体を動かすたび痛そうに顔を顰める。
彼に何度尋ねても「弓月、大丈夫だよ。どこも悪くないよ」と話を逸らされる。
毎日の行動を共にすればいやでも彼が大量の薬を飲むのを目にするし、
何か大きな病気にかかっているのではないかと心配してもどうしようもない。
私はしょせん狼で人の病気に詳しくないのだから。
体を動かすのがつらいのにも関わらずいまだに日課であるランニングを彼は行っている。
彼の体はどうなってしまうのだろうか。

私は彼が務めている病院に忍び込むことを決めた。
勤務後にその病院で診察を受けているらしく、最近は病院から帰ってくるのが遅い。
だから病院に忍び込めば何かわかるかも知れないと考えたからだ。
愛育総合病院では毎週月曜日に入院患者のためのアニマルセラピーを行っている。
そこに紛れ込めば目立たないはずだ。
彼も小児科医としてアニマルセラピーの現場に来るだろうから何とかなるだろう。

たまに意地悪をしてくる彼を驚かすことを楽しみながら、
そして彼の体調が良くなることを祈りながら日曜の夜こっそり彼のベッドに潜り込んでだ。
うなされる彼を“大丈夫だよ、きっと良くなる”と抱きしめた。
穏やかな表情で眠った彼の耳元で“明日を楽しみに…”と呟いて眠気に身を任せた。

彼がいつものように仕事に向かうと、私専用の小さな出入り口から出て、
アニマルセラピーの集合場所である夢の森センターに忍び込んだ。
夢の森センターでは沢山の犬や猫と飼い主さんが集まっていた。
点呼も終わったみたいなので、今紛れ込めば大丈夫、問題ないだろう。

「あら、弓月君じゃない。どうしたの?」
とアニマルセラピーによく参加しているというお向かいの山崎さんが話しかけてくる。
“クゥーン(馨に逢いに…)”
「ホントは検査とかいろいろあるからダメなんだけど、一緒に行きましょうか」
山崎さんの許可も貰えたことだし、山崎さんの飼い犬のふりをして病院まで歩いていく。
こんなに簡単に紛れ込めるとは思わなかったのだが、大丈夫なのだろうか。
 
 夢の森から歩いて20分ぐらいで愛育総合病院がある。
20分の間山崎さんと、山崎さんの飼い犬ワルツと世間話を交えながら楽しく向かう。
しかしその間も彼の体調が気になっていつもより早足になってしまったのは仕方が無いことだと思う。
 
 会場についてすぐ彼のとこに向かうことは出来ないので、
アニマルセラピーを行っている間はおとなしく子供たちの相手をする。
力加減がわからないこともあり、耳を引っ張られて痛いが、可愛いので許してやる。
整えた毛がぐちゃぐちゃになりながらも、この子達が良くなるようにと思いを籠め、最後に一人ずつ抱きしめてやる。
 
 「高月さん、チョットいいですか?」
「山崎さんじゃないですか、どうしました?」
「弓月君が悩んでるみたいなので、この後弓月君と話してあげてください」
「うーん、仮眠しようと思っていたのですが。この後休憩なのでいいですよ。」
山崎さん、有難う。 私から話しだせないので山崎さんが仲介してくれて助かった。
素直に話してくれるか判らないが、思いっきり彼にぶつかってみる。
出来る限り彼の助けになりたいから。

 彼と休憩室に入る。
この部屋は院長が彼の体調を気遣って休めるように用意した個室らしい。
部屋は6畳くらいで簡易ベッドと事務用デスクがある。
デスクの上に書類が散らばっているところを見ると
休憩中にも書類と格闘していることが伺えて、<思わず苦笑してしまった。
糊付けされているアイロンがかかったシーツと
デスクの上の散乱具合から考えるに彼はほとんど休んでないのだろう。
院長からこの部屋を貰うくらいだから相当具合が悪いだろうに大丈夫か。

 「弓月、俺の勤め先に来るなんて、どうしたんだい?」
“どうしたんだいじゃない!ここのところ薬の量も増えたし、大丈夫なのか?
私じゃ頼りにならない?もう、辛そうにしている馨を見たくないんだ!!
何も出来なくても、何かしたいんだ!”
「何もしなくていいんだ!
弓月が居てくれるだけで支えになっているから。
弓月に出会って俺は救われた。弓月が居るから安心して寝れる。
だから心配しないで」
“私はもっと馨の力になりたい。
支えっていうのなら頼ってくれよ!
馨はギリギリのところで生きていて、
もっと頼っていいのに落ちるんじゃないかと不安になるだろ!
何も言ってくれないほうが不安になるって分かれ、この馬鹿!”
「そんな優しいこと言わないでくれよ…!
そんなこと言われたら君を置いて逝けなくなる。
もう、長くないってわかっているのに…」
“長くないって…どういうことだよ!?”
「俺さ…、進行性骨化異形症っていう病気に罹っているんだ。
筋肉がだんだん骨になっていって最終的には呼吸も出来なくなるんだ。
現代の医学では治せない。
食事することも辛くなってきたからもうもって2ヶ月じゃないかな。」
“なっ…何で…もっと、もっもっと早く…言ってくれなかったんだよ!?”
「…言えるわけないじゃないか!
でも、君と暮らすようになって進行も落ち着いたし、
何よりもっと生きようと思えるようになったんだ!
もう、長くないけど傍にいてくれる?」
“当たり前だろ…”

 彼はその3ヶ月後静かに息を引き取った。
死ぬ1ヶ月前まで病院で働き奔走した彼は私にとって太陽だった。
彼のように誰かのために生きたいと、誰かの役に立ちたいといろいろ奔走した結果、
この力を得、主としてこの森に住まうことになった。

私はもう長くは無い。

だから、君たちに人間全てを憎んでほしくなくて、この話をした。
この森に来る人間は私たちを狩る恐い存在だが、
それ以外にも平穏を求めて
同じように生きている人間がいるということを
知っていてほしかった。全てを憎まないで…




 もう、疲れた…。しばらく寝させてくれ…。

拍手

PR
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
管理人のみ閲覧

この記事へのトラックバック

トラックバックURL:

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

プロフィール

HN:
癒音
性別:
女性
職業:
サービス業
趣味:
創作活動
自己紹介:
こんにちは、癒音です。
音で人を幸せに出来たら…
と夢見ている社会人です。
皆様宜しく
御願いいたします

ピアプロに生息中

アイコンは深瑠様に
描いていただきました
<< Back  | HOME Next >>
Copyright ©  -- 悠々自適 --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by もずねこ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]